かつて１００兆マルク紙幣があった…
２００１年５月２９日（火）
＊ドイツの貨幣を学生の間で回覧させ、触らせることを長年してきましたが、それができるのも今年までとなりました。２００２年からユーロに変わります。半年間は入れ替え期間。２００２年７月１日からマルクは完全に廃止となります。１００マルク紙幣はクララ・シューマンの絵。裏はグランドピアノという図柄で、音大などではインパクトがありました。５マルク紙幣はロマン派のベッティーナ・アルニム（女）。１０マルクは数学者カール・フリードリヒ・ガウス（男）、２０マルクは詩人アンネッテ・フォン・ドロステ＝ヒュルスホッフ（女）、５０マルクは建築家バルタザール・ノイマン（男）というように、著名な男女の絵を交互に載せて、男女平等にもなっている。一般に学生は直接、外国の貨幣に触れると、へ～っ、こんなのかあと、強い関心を示します。実際に使われている貨幣ということで、実感が湧くのでしょう。時折、いたずらする悪いヤツもいました。紙幣を縦に幾重にも折り、アコーデオンのよう畳むと、紙幣の真面目な顔が歪んで、とんでもなく変てこな顔になる。その変化を楽しむのです。これをされると傷むので、禁止するようにしましたが。
コインを回覧すると、戻ってきた時は、日本の１円玉や５円玉、１０円玉などが加わっていることもありました。これは、御布施として有り難く頂戴しました。
ユーロ紙幣は、一国の特徴が出てはまずいので、抽象的な図柄を使っています。ユーロ参加国が共同で使う貨幣ということで、妥当でしょう。しかし、もう学生に回覧はしないことになりそうです。さて、現在のマルク紙幣の最高額は１０００マルク紙幣で、グリム兄弟の絵です。私はこれは写真でしか見たことがありません（現在、１マルクは６０円くらい）。では、過去、ドイツで発行された紙幣の最高額はいくらでしょう。
なんと１９２４年２月１５日、１００兆マルク紙幣が発行されています。１９１８年の第一次大戦の敗戦後、猛烈なインフレが続いていたわけです。
１ドル換算
1920 1/1 50 Mark
1921 1/1 75 Mark
1922 1/1 190 Mark
1922 7/1 400 Mark
1922 1/1 9.000 Mark
1923 6/1 100.000 Mark
1923 9/1 10.000.000 Mark
1923 10/10 10.000.000.000 Mark
1923 10/25 1.000.000.000.000 Mark
1923 11/15 4.200.000.000.000 Mark
（ドイツのサイト、SAMMLER COM より）
他のデータでは、戦前、１４ペニヒ（１マルクは１００ペニヒ）だったパン１㌔が、
1923 1月 ２５０マルク
8月 ６、９００マルク
9月 １、５００、０００マルク
11月 １、７００、０００、０００マルク
したという（shz Zeitung)。
シュタイナーが生きていたころのドイツの経済状況がこれです。
１００兆マルク紙幣が存在したことを学生に話したら、ある女子学生が、「それまだ使えるんですか」と私に尋ねました。なわけ、ないでしょう。
今も額面通り使えたら、１枚で、日本の国家予算５０年分だ～ぁ。
なお、保存の良い１００兆マルク紙幣は現在でも６千～７千マルクで売れるそうです。日銀の貨幣博物館には１０兆マルク紙幣が展示されている。裏は白紙。１０兆マルク紙幣までは日本の、このサイトで見られます。