３０００通のはがきを書いた父

２００４年２月２日

　父のところへ寄ると、荷物が届いていました。母の同級生からでした。年賀状を父の名前で送っているのですが、出すたびに懐かしがってくれる。今回は、母 のお供えにしてくださいとお米とマルボウロを送ってきたのです。それから母が彼女に送った手紙が２通同封してあった。彼女も、もう９０歳。老い先短いこと を思い、散逸しないようにという心つもりで、母の手紙を送り返してくれたのでしょう。送り状には、父のことも書いてある。父は福岡に１０年単身赴任してい たのですが、その間に母に毎日葉書を書いていました。その数３０００通。それを知った飲み仲間の新聞記者の推薦で、NHKテレビの「私の記録」という番組 に出たのです。九州だけで放映された番組ですが、九州は両親の郷里なので親戚・友人すべてが見たらしい。その記憶が母の同級生にも鮮明に残っていて、９０ 歳になっても覚えている。「愛妻家のご主人」というイメージで。そのことがまた手紙に書いてありました。テレビ放映したとき私は大学院生でした。スタジオ から私たちがいる東京の留守宅に電話がかかり、母も声で番組に登場しました。私は当時こういうことが大大大の苦手だったので、電話がかかって来た時、耳を ふさいでわーっと奥の部屋に逃げ込みました。母が実況中のテレビ番組で話しているのなんか、恥ずかしくてとても聞いていられなかったのです。
　あとでビデオが送られてきたとき初めて聞きましたが、案外明るい声であっけらかんと話していた。親戚中に若々しい声だったと評判になったらしい。父は ３０００通の葉書がドンと積まれた机の前で、緊張して固くなっていました。
　出演料はなく、記念品に目覚まし時計をもらっていましたっけ。

１０年間、毎日葉書を書いていた父親。私がこんなふうに「つぶやき」を毎日書いているのも遺伝かも。