空海のホロスコープを作る
２００２年２月１３日
＊昨日は、以前ビデオに撮っておいたNHKスペシャル「空海の風景」前編・後編を見ました。２００２年１月４・５日に放映されたものです。表題の「空海の風景」は司馬遼太郎の同名の作品からとっています。この作品の内容に沿って、映像を交えながら空海の生涯を追っているわけです。
空海と言えば、日本人でありながら中国人以上に中国語を読み書きでき、９世紀初頭（８０４年）に唐に渡って真言密教を日本に伝えた超人的な人ですから、当然、密教の内容の紹介に関心が向く。でも、その面では、全体の印象としては、表面をなぞっただけでした。もともと、こうしたドキュメントで真言密教の内容を深く紹介できるわけもなく、空海の生涯を、司馬遼太郎の易しい語り口を介して外面的にとりあげているのだと思って見ればいいのでしょう。
でも、ナレーターの話し方が、もったいぶった感じもあったせいか、朗読される司馬遼太郎の文章が、私には耳障りでした。史実と憶測をない交ぜにした文章が、ドキュメント風の番組にマッチしていない気がしました。読み物として読むぶんにはいいのでしょうが。空海生誕の地とされる香川県善通寺も紹介されました。印象に残ったのは、娘さんに先立たれて、毎朝お参りに来るという土地のおばあさんでした。直腸がんで２年わずらって亡くなったそうです。おばあさんが泣きながら、「いい魂しとったのによう」という言葉が、心に深く響きました。純粋な心根をしていたという意味でしょうが、土地の言葉かもしれないけれど、「いい魂」という言葉の響きが新鮮でした。肉体的なものを越え、魂の良し悪しだけで人を判断する基準が、僧職にある者だけでなく、一般の信者にもあるらしいことを思って、ハッとしたのです。
この寺では６月１５日が空海の生誕の日として祝われ、お誕生会が催されるそうです。西暦７７４年生まれ。そこで、ちょっと空海のホロスコープ（西洋占星術による生誕図）を作ってみました。西暦７００年代の天文歴まで利用できるすぐれもののソフトです。
出生時間が分からぬ場合の常道で、いちおう１２時で作ってみる。画面に現れたホロスコープは、一見して、おお〜っというもの。太陽・水星・天王星がふたご座で合になっている。簡単に言うと、水星は知性の星。天王星は独創の星。それらが、本人を表す太陽と、ほぼ同じところにある。しかしこの相は、数日間続きます。この６月１５日１２時のホロスコープでは、水星は太陽から数度離れている。この日でなければ、もっと太陽に近い時があるはず。あれほどの人物であるからには、水星は太陽と１度以内くらいに重なっているのではないかという仮定のもとに、日にちや時間を変えて、さらに調べてみました。
結論：空海は７７４年６月１１日午前１時頃出生の線が強い。
その理由のひとつは、知性・独創の要素を木星が衝（１８０度）で強力に支援する相が、このころ成立していることが挙げられます。１５日には成立していません。この支援は、しかし数日続く。１１日にした理由は、月がこの日、本来の座であるかに座にあるからです。これは深い感受性を表す。生誕図の水星も本来の座のふたご座、木星も本来の座、いて座にありますが、空海なら月も、本来の座にあると考える方が自然です。１５日には成立していなかった月と金星の１２０度の相もできている。これは芸術に適した相です。彼が戯曲風な文章を書いたり、書をよくすることを思えば、芸術の相は必要です。
さらに時間を１時に絞ったのは、そうすると学芸の星、木星が精神を表す９宮に入るからです。この相は、学識と、深い直観力を表します。太陽・水星・天王星の合は、意識を表す３宮に入る。これもぴったり（なお私は宮のシステムはプラシーダスで見ます）。社会的な面を表す１０宮には、終りと始まりを表す冥王星が入る。真言宗の開祖にふさわしい相です。なお、今調べたら、一般に流布している生誕６月１５日説は、空海が不空三蔵（７０５ー７７４）の生まれ変わりであるという信仰に基づき、その亡くなった７７４年６月１５日を生誕の日としたそうです。生誕の年だけが分かっていたのに、このような経緯で月日も決められたらしい。
うーむ、７７４年６月１１日を空海の生誕の日とすると、不空三蔵は、その時まだ生きていることになる。生まれ変わりは不可能となる。すると、そもそも６月１５日生誕という根拠自体が崩れ、その近辺の日を探すことも無意味になる。でも、６月１１日頃だと分かっていた時期があって、たまたま、それが不空三蔵の忌日に近いので、生まれかわり説が生じ、１５日にされてしまったのかもしれません。太陽暦に直す時の誤差などが関係しているのかもしれませんが、よく分かりません。
しかし、少なくともホロスコープ的には、７７４年６月１１日１時は、空海生誕の時として、納得のいく相をしています。あとは空海の生涯を年代的にたどってトランジットで調べる手が残っていますが、そこまでやる気はしません。いちおう占星術から足を洗ったと公言していますし。（未来予知が自由意志に悪影響を与えるので止めました。）