マロンの最期

2020年5月3日

午前12時すぎに、その前の夜同様マロンが鳴いたため、家内が抱いてさすってやりました。医者から鳴くのは老犬によくある夜鳴きだろうと言われたのが頭にあって、鳴声を聞いても前日感じた強い居たたまれなさは減じていましたが、後で考えると、やはり痛かったのだと思います。とにかくその鳴声を聞いては寝ていられない。家内が医者からもらっていた鎮静剤を試そうというので、私は一階に降りて薬を水に溶かし小さなシリンジで飲ませると、すぐ効果が出て眠ってくれました。しかしそれも3時間ほどしか効きませんでした。3時過ぎにまた鳴き始めたのでもう一回飲ませました。しかしすぐには鳴きやまず、薬の効果が減ってきたかなと思ったりもしました。

　3日の朝6時ごろ、目を覚ますとマロンはすやすや眠っていましたので、布団ごと抱えて一階に降ろしました。

　一階に降りたマロンは、布団に横たわっている。7時半ごろ、咳込んでいるマロンを抱え、咳が終わったころ、大丈夫かな〜と思いながらシリンジで餌を与えると、案外ごくごくと飲み込んでくれて一安心しました。

　家内は２晩続いた「夜鳴き」に疲れ切っている。このまま長期戦になるのかと不安を口にする家内。

私は医者に行って鎮静剤を多めにもらってくることにしました。マロンは咳は出るけれど、餌も食べたし、医者に連れて行って診てもらうことにしました。日曜日の診療は午前中だけなので10時すぎに行くことにしました。

ハウスに服を着たマロンを横たえ、その上に小さな寒さ避けの毛布をかけ、自転車の前かごに乗せて出発。医者に行くときはいつも自転車の前かごに乗せていますが、いつもと違うのはハウス（といっても屋根はない）ごとだという点です。その方が振動も少ないので。

　この日は案外暖か。受付を済ませ、病院の外の歩道にある椅子にマロンを抱いたまま座って待ちました。車道を自転車で通り過ぎる人がハウスに乗せられて寝ているマロンをじろっと見たりする。

　順番が来て診察室に入り、体重を測ると服とおむつをしたままで３．５４ｋｇ。私は夜中に鳴いて鎮静剤を使ったことを報告。医者は少し薬を多めにすることにしようと言って、1錠の3分の１の分量の粉薬で効き目が悪かったら、4分の１に割った粒を加えてくださいと薬を処方してくれました。

　この医者はこの時点で、3時間後にマロンが死ぬことを全く予測できていなかったことになります。

　私はこの獣医が丁寧で優しい人柄だと感じていますが、マロンの病状を正確にとらえていたかというと疑問に思います。

　マロンの首が曲がっているのは三半規管の問題か、脳梗塞の結果だろうというけれど、本当にそうだったのか。咳をすることを何度も訴えたけれど、その原因について一度も診断してくれなかった。ここ2年ほど鳴かなくなったマロンが、キャンと悲鳴を上げたり、ウゥゥと苦しそうに鳴くのは本当によくある「夜鳴き」だったのだろうか？

血液検査で判明していた急性膵炎は強い痛みが出るということだったけれど、それではなかったのか。

　老衰の末にいろんな器官が同時に不全に陥っていたのでしょう。病因は複数あると思います。痛みがあったのだと思うとつらい。

　昼の１１時半ごろ帰宅しましたが、マロンの呼吸が速くなっている。直感的にとうていシリンジで餌をやれる状態ではないと分かり、家内にも、もう水だけにすると伝えました。

　私らが昼食を食べている間、窓際に敷いた布団に寝そべっているマロンの腹が速く上下しているのが見える。

　私は食べるのを中断してマロンのそばに行くと、家内に、これは危篤の状態だよと伝えました。肺気腫で亡くなった叔父の呼吸を彷彿させる状態でした。しかし家内は違う意見で、ふだんでもこのくらいの呼吸よと主張。それは楽観的だなと私。起きている時でなくて寝ていてこの呼吸だよと。

食事を済ませたころ、マロンの呼吸が穏やかになっていました。家内は言った通りでしょうという。私も、そうなか？と思いましたが、後から思えば、命が尽きる直前に起こる一時的な寛解だったわけです。

そのあと今度はマロンは口を開き、呼吸がさらに浅くなりました。家内が口呼吸になったから大丈夫という。また悲しい間違い。呼吸器系の病気の最期に見られる苦しい状態です。私が臨終だよと伝えました。

そして徐々に呼吸が浅くなり、家内もやっと状況を受け止めました。腹の上下も少なくなってついに動かなくなった。私はマロンが死んじゃった！！と涙がどっと出ました。家内も泣きました。

私はマロンの見開いている目のまぶたを指で撫でてつぶらせました。なかなかつぶらないので何度も撫でました。

　このあとは手続きがいろいろあるので、悲しみにふけることはできない。まず近くに住む長女に知らせると、子どもを婿さんの両親に預けて我が家に来てくれました。

　三女のために飼うことにしたマロン。その三女も遠いのに駆けつけてくれました。

　次女は婿さんが仕事でいないため、来れず。

　私が書斎で区役所に届けるペット死亡届けの申請書を書き終わってリビングに降りると、マロンはいつもはしまってある折り畳みテーブルの上に小さな毛布を掛け布団代りにして横たわり、その前に花束が置かれ、さらに線香が焚かれていました。

　家内はマロンの体を拭いてやり、歯をみがき（自分で水を飲めなくなってから歯が汚れていた）、耳の中もキレイに掃除していました（生前も耳の中を家内がときどき掃除していました）。

　ペット専門の葬儀社を三女が検索して夜に来てくれることになる。

　夜７時半に葬儀社の車が到着。我が家の駐車場に停めてもらう。準備しますので連れてきてくださいと業者の中年男性に言われ、家内がマロンを抱き、娘たちもついていく。私も行ってみると、車の後ろが大きく開いていて、車内に大きな火葬施設がある。

　さすがにその場で火葬することはなかったですが、マロンを車内に寝かせ、手を合わせたあと、車は去りました。支払いは業者のスマホに末端をつけてクレジット支払いという便利さでした。

　娘たちはしばらく一緒にいてくれました。ペットロスを心配して。