視野の中には鼻がある

２００２年８月２３日

＊学生から残暑見舞いが１通来たとき、私は寝込んでいましたので、返事は寝ながら書きました。ただでさえ下手な字が、さらに下手になる。そこで今、腰痛で寝ながら書いていることを言い訳として書き添えてから、余白に、自分の視野をそのまま絵にして描こうと思いつきました。天井が見えます。それから、天井の笠つき電灯から点灯用のヒモが下がっているけど、寝ながら操作できるように、そのヒモの端にさらに荷造り用のヒモをつけて、布団のすぐ上まで垂れている。こういう状況を絵に描きながら、自分の視野をくまなく探すと、いろいろ見つかる。まず葉書と、その葉書を書いている自分の腕がにょきっと左右から出て、目の前にある。これは書かないと。ホンモノの葉書に書いている文章も、その絵の中の葉書に書く。この絵も描く。それから、私はメガネをかけているので、視野には、ぼんやりとでっかいメガネの枠が浮かんでいる。メガネの真ん中には、邪魔な鼻がある。すべてぼやけているけど、視野にあるのだから、描かずにはいられない。

　という風に描いていて、気がつくと、この葉書は、無邪気な教え子への返信としてはあまりにも狂気じみたものになっていました。実際に見える視野にあるすべてを描いているだけですが、そういう徹底性というのは、人間の常識から外れるわけですね。

　というわけで、この葉書は残念ながらボツ。学生にはメールで返事を出しました。


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