末続慎吾が３位

世界陸上２００ｍで末続慎吾が３位

２００３年８月３０日（土）

＊昨夜は熱帯夜で暑苦しかったです。窓を開けて寝たのですが、風も入らない。明け方まだ暗いうちに目が覚めてから、暑くて寝られない。枕もとの時計を見ると、午前３時４５分。よし、どうせ寝れないなら、４時から始まる世界陸上の２００ｍ決勝を見ようと、起き出しました。末続慎吾選手の活躍をライブで見届けようというわけです。メダルの可能性もある。元陸上部短距離選手だった私としては、世界陸上やオリンピックの短距離で決勝に残ることからして画期的だということはよく知っている。今まで誰もいなかったんじゃなかったっけ？　まてよ、飯島秀雄選手（６４年・６８年オリンピック１００メートル出場）を育てた吉岡隆徳がいたかな？吉岡は手動計時１０秒３の当時の世界タイ記録保持者で、オリンピックの決勝で走った記録映画を見たような気がする。ロケットスタートで、５０ｍまで１番だったけど、あとドドドと抜かれていって、結局びりだったと思う。

　今調べたら、１９３２年の第１０回ロサンゼルスオリンピックで決勝に残り、１０秒８で６位入賞だそうです。でも映像ではビリだったらから、決勝で走ったのは６人ですね。世界タイ記録をひっさげてオリンピック決勝に進んだのだから、さぞかし日本では金メダルを！と騒いだことでしょう。それがビリ。

　次のピークはその吉岡が育てた飯島秀雄選手。彼も師から受け継いだロケットスタートで、前半が得意。１９６４年の東京オリンピック前に１０秒１のその年の世界最高タイだったかを出してオリンピックに出場。彼も日本では金メダル候補として騒がれました。当時高校で１００メートルを走っていた私はよく覚えています。結果は準決勝で敗退。５０メートルまでは１位で、そのあと、どんどん抜かれていきました。１９６８年のメキシコオリンピックでは２次予選で敗退だったと思う。（彼はその後、プロ野球で代走屋になったけど、野球勘とは無縁の元陸上選手の悲しさで、よくアウトになっていた。ドドドと百メートルの疾走スタイルで２塁に向かってくるので、危ないという苦情もあった。球界を退いたあと数年後だったと思うけど、陸上の大会に出る自分の娘を車で送っていく途中、女子中学生をはね、死なせるという人身事故を起こしています。上昇下降の激しい運命の持ち主です。）

　２００メートルでは、近いところでは１９９８年バンコク・アジア大会の伊藤浩司選手（２０秒１３アジア新で１位）が目立ったけど、結局オリンピックや世界陸上の決勝には残れなかった。
　２００メートルの日本人メダル候補なんか、これまでいませんでした。１００メートルだったら、スタートで稼いで、なんとかもたせるという作戦で、チャンスがあるような気にもさせる。短足胴長の日本人選手は低い姿勢からのスタートが得意。一気に加速して３０メートルで１メートルくらいリードする。しかし中間疾走に入ると、足の長い外国選手のスピードは桁違い。新幹線が在来線を追い抜くみたいに、抜いていく。抜かれるまでどのくらい頑張れるかで日本選手の順位は決まる。これが従来の日本選手の１００メートルのパターンでした。２００メートルは中間疾走が長すぎて、まったく歯が立たない。１００も２００も、中間疾走の走力の違い、つまり実力の違いは歴然というわけでした。
　伊東浩司選手がアジア大会１００メートルで１０秒００のアジア新を出したころは、中間疾走にも伸びがあり、その後アジア初の９秒台がでるかと期待が高まったけど、結果的には、彼の走力はこのアジア大会がピークでした。

　ところが末続選手は、ちょっと違う。足が長いのです。走っているときの姿も、かっこいい。他の選手に言わせると、顔は日本人だけど、走りは黒人選手だそうです。なお、短距離は圧倒的に黒人選手が強い。１００メートルで９秒台で走った選手は歴代で延べ数十人いるはずだけど、白人もアジア人もゼロ。

　ところが末続慎吾選手は今年度１００メートルを１０秒０３で走ったあと、２００メートルでは２０秒０３を出し、今年度世界的に記録が低調の中、期待が高まっていました。世界陸上に参加する選手の中で２０秒０３は今年度最高。絶好調が維持されているし、勝負度胸もいい。今回の世界陸上でも、１次予選、２次予選ともに１位、準決勝は２位（２０秒２２）と順調に来ていました。今回は圧倒的な優勝候補もおらず、末続が２０秒０３の自己記録近くで走れば十分メダルにも届く予想が立ったのでした。そしてスタートで失敗してビリから２番目に出たのに、最後３位に残ったのですから、従来の日本人選手にない、実力の勝利だったわけです。記録が１位２０秒３０（末続は２０秒３８）というのは、世界陸上で、これまでにない遅いタイムですが、まあ同じ条件で闘って、現在の時点で末続が世界で３番目に早いことは証明されました。

１位ジョン・カペル　　（米国）　２０秒３０
２位ダービス・パットン（米国）　２０秒３１
３位末続慎吾　　　　　　　　　　２０秒３８
４位ダレン・キャンベル（英国）２０秒３９

なお世界記録はマイケル・ジョンソンが１９９６年、アトランタで達成した１９秒３２（このときジョンソンは爆走のあまりゴール間際で太腿を痛め、あとのリレーは棄権した。末続も日本で自己最高の２０秒０３を出したあと、足を痛めていたし、今回も途中で太腿がつりそうになっています。まあ無理は禁物…）。

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