「あるタブーの終焉」（ドイツ人智学系新聞Info３、１月号の特集記事）についての報告
１．導入
書き出しは以下の通りです。
「２００１年９月、さまざまな受賞経験もある軍事専門家ニック・クック（Nick Cook)が、英国の著名な出版社からレポートを出版したが、当初は大した注目も浴びなかった。クック氏は軍事産業問題の国際的専門雑誌の、空軍部門編集者である。彼は集中的な取材によって、アメリカ合衆国では、とっくに反重力の技術が開発され、応用段階に入っているという結論に至っている。
いったいどんなエネルギーの秘密が究明され、用いられているというのだろう。もしかしたら我々はエネルギーや技術や文明の考え方を根本から変えてしまうような革命的な変化のただなかにいるのではなかろうか。」
もう少し具体的にいうと、ニック・クックは世界的に有名な国防・軍事専門雑誌「ジェイン防衛ウィークリー（Jane's Defence Weekly)」の航空・空軍組織の専門家である。彼の著書『ゼロ・ポイントを追って（The Hunt for Zero point)』は２００１年９月１日、つまり同時多発テロの１０日前に、世界に名を知られた出版社ランダム・ハウス（Random House)から出版された。
Info3編集部のアムノン・ロィヴェニ−は、９月１１日の同時多発テロで世界貿易センタービルに突っ込んだ旅客機が燃料（高度に精製された石油）を満載してミサイル化していたことを指摘して、石油がこのテロで決定的な役割を果たしていることから説き起こす。世界最大の産油国サウジアラビアと石油の大消費国米国の親密な関係はサウジの独占輸送会社 Aramco という社名にも見て取れる。この Arab American Oil Company は１９３３年に米国の４つの会社が合併して出来たもので、１９８０年にサウジアラビアに移管された。ソ連が崩壊した１９９０年代の初め、中央アジアの新しい国々に石油と天然ガスが発見され、一躍、エネルギー関係の政治家や企業家の注目を集める。アメリカ、ロシアなどが、その権益をめぐる競争に乗り出す。１９９７年にカルフォルニアの石油会社 Unocal の主導のもと、ある財団がタリバンと契約を交わし、トルクメニスタンからアフガニスタン経由でパキスタンを通りインド洋に至るパイプライン建設を決めた。しかしこの計画は、つぶれてしまった。１９９８年にケニアとタンザニアのアメリカ大使館がテロリストに攻撃され、アフガニスタン在のオサマ・ビンラディン氏がその黒幕と見なされたからである。
アラビア半島の石油に代わるエネルギーが求められている。アメリカは必要な石油量の半分しか自国で生産していない。
クリントンはロシアをこの地域から排除しようとしたが、ブッシュ政権は、経済不況を招いてまで、プーチン政権と協同して、イスラム過激派の脅威と戦おうとしているように見える。ロシアの協力の下、カスピ海からアフガニスタンを横切ってインド洋に至るパイプライン建設という非現実的なプロジェクトが再び浮上してきている。イスラマバードの米大使はパキスタンのムシャラフ大統領に、このパイプライン建設を既に約束している。パキスタンは、ロシアと共に、その権益にあずかることができるのだ。
しかし石油は同時多発テロ後、需要が落ちている。石油価格も落ちている。ここから話は、クックの本の内容に移っていく。
２．奇妙なコピー
クックがほんの数分間、席をはずしている間に、彼の机の上に奇妙なコピーが置かれていた。それは１９５６年にMichael Gladych が書いた記事「The G-Engines Are Coming ！」であり、アメリカ合衆国の複数の主要な航空会社が行った画期的な重力制御実験の報告書だった。こんなSFじみたテーマは軍事専門家にとっては、タブーだったが、１０年をかけて調べるうちに、驚くべき事実が判明してくる。
まず、その記事の中に、当時の航空部門で指導的役割を演じていたローレンス・D・ベル(Lawrence D. Bell)や、ジョージ・S・トリンブル（George S. Trimble)の名が出てきており、彼らが重力制御の可能性に言及している。クックは原爆製造のマンハッタン計画の時に科学者に対して行われた厳格な緘口令が、この計画でも実施されていて、未だに続いているこの研究について、航空軍事専門家の自分ですら、全く知らされずに来たのだろうかと疑う。クックは、The Financial Times, The Times, The Sunday Times, Daily Mail, The Sunday Telegrapf他、多くの専門誌にコメントを書いている航空軍事専門家であり、BBC World Service, ITN, Sky News, CNN などのニュースでも、たびたびインタビューされている。クックは世界中の航空軍事専門家の重要な会議に出席しており、この部門の主要な開発者とは個人的に知り合いである。１９８７年以来、この業界のインサイダーであった彼が、この件について、全く何も知らされなかったということがありえるだろうか。
彼が調べ始めるとすぐに、著名な専門誌 Interavia Aerospace の１９５６年の記事に、電子＝重力学分野の研究で、全人類にとって意味のあるレベルの成果が達成されたという報告が見つかった。こんな権威ある専門誌でなぜ、このような記事が公表されたか疑問だったが、この記事では、航空業界の指導者たちの名や、このテクノロジーの応用のいくつもの可能性が挙げられていた。反重力装置によって、航空機を動力なしで飛ばせるだけでなく、車や列車も動かせるというのだ。世界中のエネルギー問題がこれで解決するという。
１９５５年に航空会社 Martin Airkraft Corp の副社長だったトリンブルが、重力テクノロジーは５年以内に制御できるようになるだろうという楽観的な見通しを述べているのを読んで、クックはぜひとも彼と連絡をとりたいと思う。しかし、彼からこの件について説明を受ける試みは失敗する。彼の代わりに、ロッキード・マルティン社の公報担当者が言うには、老トリンブル氏は、クック氏が彼の過去について関心をもっていると知らされると、すっかり臆病になったそうだ。いったい引退した元経営者が、４０年前の自分の発言について、それほどおびえるものなのだろうか。「G（重力）プロジェクト」は、じきに軍によって機密事項になってしまったのであろうか。そのテクノロジーを用いて航空機を建造するところまでいったのだろうか。クックはこの問題にはまってしまった。
（このあとニュートン力学、アインシュタインの相対性理論、シュタイナーの反物質への言及などが採り上げられるが、詳細は省略する。）
ニュートンが自分の物理理論に対して行った自己批判はあまり知られていない。いわく「魂がこもらず、理性のない物質が、媒介者なしに、互いに影響を及ぼしあえるとは、理解しがたいことだ」。
相対性理論と、現代物理学の基本理論のひとつは、存在するのは、我々が感覚で捉えられる物質と、何もない空っぽの空間であるというものだが、科学者は、遠くの銀河が「見える」ためには、何か未知のエネルギーが空間を満たしているからではないかと考えている。それは星の情報を我々の眼に伝える光子だろうか。太陽から放射される熱放射だろうか。あるいはどこにも遍在する重力だろうか。このような考えを発展させて、量子力学が生まれた。
量子力学によれば、この物質世界は、非物質的な世界から生まれたことになる。我々の知覚の届かない、数学的にしか推測され得ない領域から、この世界が生まれたするこの理論では、現実の物質は、量子領域から特定の仕方で励起された形態に過ぎない。
重力は、難しい謎であり続けている。重力の特性を知らずして、反重力の達成は不可能だろう。真空は多くの物理学者の考えでは、「からっぽ」ではない。絶対温度０度のゼロポイントでも、空間はいわゆる波動に満ちている。これはゼロポイント・エネルギーと呼ばれている。
既に１９４８年、オランダのフィリップス研究所教授のヘンドリック・カシミール（Hendrik B. Casimir) は、絶対温度０度（マイナス２７３．１５度）の真空中で２つの金属片を髪の毛一本の巾より近づけると、他の要因を排除していても、互いに引かれ合うと予測していた。この実験条件は実に簡単なものだったが、実施するのは大変難しく、５０年後の今日、ようやく多くの困難を伴いながら実施できるようになった。
カシミールが考える実験では、完璧に反射する２枚の金属片がおよそ１マイクロメーター（千分の１ミリメーター）の距離で並べられる。金属片の間の仮想光子の濃度は、その外側よりも低くなる。これは、２枚の金属片の間に引力が働くことを意味する。
１９９７年、カシミール理論の妥当性が初めて実験によって確証された。理論値と１％と異なっていなかった。研究者たちは、この実験によって、「カシミール力」がカシミールが予言した通りの強さであることを証明できた。この力の源は、文字通り、虚空の中にあるように見える。
この実験成果によって、「虚空」の中にいわゆる「自由エネルギー」が存在するか否かという問いに答えが出された。それは証明され、受容されたのである。今や、問いは「虚空」からどのくらいのエネルギーを引き出せるかという点に移っている。ニック・クックは、この新しいテクノロジ−の科学的基盤を探究するにあたって、英国の物理学者ダン・マルクス（Dan Marckus)の助力を受けている。しかし『ゼロ・ポイントを追って』には、マルクスの本名は挙がっていない。マルクスが、機密軍事産業に近い関係にあったからである。マルクスの説明では、虚空から取り出せるエネルギーの算定は、解釈によって違うという。靴箱一個の空間から取り出せるエネルギーは全宇宙を吹き飛ばすに十分だという人もいるが、宇宙全体のゼロポイント・エネルギーを集めても、ゆで卵１つも作れないという人たちもいる。
戦闘機の専門家であるニック・クックは新しいテクノロジーを追及しているうちに、既に１９５０年代に米国の全ての大手メーカーのもとで、画期的なテクノロジーが、応用段階にあったということを発見した。インターネットでこの件を調べると、多くの空想やＳＦとまぜこぜになった情報があふれていた。
クックはまず、１９２１年にブラウン運動を発見したことで有名な、トマス・タウンゼント・ブラウン( Thomas Townsend Brown) のケースを調べ始めた。ブラウンはコンデンサーを一定の高電圧の元におくと、コンデンサーの空間内の方向とは無関係に正極方向で運動モーメントを得るこということに気が付いた。彼は１９２９年、アルバート・アインシュタインの共同研究であり､オハヨウ州のデニソン大学に勤めるポール・アルフレッド・ビーフェルト(Paul Alfred Biefeld)と一緒にさらに研究し、その結果を「私は重力をどのようにコントロールしたか」というタイトルで専門雑誌に発表した。彼は「Gravitor」という名の重力制御装置を開発していた。多くの学者が、このビーフェルト・ブラウン効果を追試して確認した。ブラウンは米国海軍の実験室で、特別プロジェクト「Winterhaven」に携わり、その他、ロッキード社や、米軍のさまざまな研究所でも働いていた。この時期以降、彼が開発していたという特殊な飛行物体に関する報告書は、非公式なものになる。後の第二次世界大戦中、彼はレーダ遮蔽技術の研究に従事している。
ブラウンの実験とその成果に関して、軍事産業は、秘密保持の理由で徹底して情報非開示にしている。そのためＵＦＯ愛好家の間でさまざまな噂話が流れることになった。ブラウンが軍のためにある種のＵＦＯを作ったというのだ。その際ＵＦＯ愛好家が論拠に挙げる報告書は１９４７年９月２３日にNathan Twining 将軍が書いたもので、「空飛ぶ円盤」に関するものだ。この人はかつては米国空軍の司令官だった。トゥワィニングは彼が目撃した物体が、「金属か、かすかに反射する表面」をもっており、「円形ないし楕円の形をした平たい皿型で、上部はドーム型である」と報告している。他に、「通常、無音である」としている。
クックは、トゥワィニング将軍の報告書を読むうち、ＵＦＯ愛好家が常に無視している箇所があることに気が付いた。将軍はその報告書の論理的一貫性を、他ならぬこの箇所で表明しているというのに。
彼は書いている：「米国の現在の知識水準でも、ちょっと細かな調整をほどこすだけで、このような飛行物体の特性をもち、飛距離１１５００ｋｍに達する飛行機を製造することは可能だ。」
クックは、米国空軍の軍備部門の司令官として、トゥワィニング将軍は自分の述べていることの意味を正確に分かっているはずだと考えた。しかしなぜ軍事専門家のクックが、５０年後になっても、戦闘機産業の歴史の中にこのような機能をもった航空機を発見できないのだろうか。
原爆開発のマンハッタン計画の時、開発に当たった４万人の科学者は厳しい緘口令の元にあり、この計画だけのためにネバダの砂漠の地下で働いたというのに、じきにソ連の知るところとなり１９４９年には米国の原爆の占有をソ連が破ることになった。米国は水爆の製造でやり返したが、ソ連もすぐ追いついた。こうした出し抜き合戦が、冷戦時代にもずっと続くことになる。新しいプロジェクトは厳格に秘密を保持されねばならない。
レーダー遮蔽のステレス機Ｆ１１７は１９８３年１０月２８日に最初の任務に飛び立ったというのに、その存在は１９８８年１１月１０日まで秘密だった。そのテクノロジーは現在も秘密である。
科学者は、諜報機関を恐れて軍事秘密は口外しないものだ。重力制御というような革命的な技術の場合、どのように振舞うべきかを科学者たちはよく知っているだろう。このようなプロジェクトのために、米国予算には、いわゆる「闇予算」がある。使途は明記されなくてもよい。国防省の支出からも、秘密のプロジェクトは知ることができないようになっている。あるプロジェクトが、表の予算から突然、闇予算へ鞍替えされるのを見られたら、特に興味深いだろう。
３．ＮＡＳＡと重力「遮蔽」
クックは、いわゆる闇の世界を訪れる時期にきたと思い、アメリカのいくつかのその種の研究所を訪問し、プロジェクトのリーダーたちと面談する。多くの会社や研究所が常識やぶりのテクノロジーを手がけていることを確認する。そのうちのひとつ、米国の航空宇宙局ＮＡＳＡも、ＳＦと見なされるような研究領域に携わっている。
ＮＡＳＡのマーシャル・宇宙飛行センター（アラバマ在）ではたとえば、「超光速宇宙飛行」とかのプロジェクトの名を耳にする。この後、センターから１千キロ離れた、出来たばかりのマーク・ミルズの事務所を訪れる。ミルズは ＮＡＳＡの「breakthrough Propulsion Physics( BPP)直訳すると＜突破推進物理＞」 という名の特別プログラムの主任だ。彼は、このプログラムの研究には５つの重点があると説明してくれる。１．慣性を制御する可能性。
２．ゼロ・ポイント・エネルギー。その時空との関係。ならびに、タイム・トリップの可能性。
３．電磁波が重力や時空に与える影響。タイム・トリップの制御。
４．超光速と時空の超克。
クックがミルズに５つめは何かと聞くと、あなたはマーシャル・宇宙飛行センターから回ってきたんでしょう、聞かなかっんですか？と驚かれる。そしてＮＡＳＡのマーシャル・宇宙飛行センターでは、Ｅ．ポドゥクレトノフ（Podkletnov)教授の反重力実験を引き継ぎ、研究を進めているのだと教えてくれる。何年も前から、この研究によって、推進テクノロジーを開発しようとしているというのだ。
ポドゥクレトノフはフィンランドのタンペレ工科大学で「偶然」画期的な発見をしたロシア人科学者である。彼とそのチームは超伝導物質の研究をしていた。そして、高速で回転するディスクをテスト中、ある同僚が、自分の吐いたタバコの煙がそのディスクの上方で、まるで壁に突き当たって急激に上昇するような動きをしているのに気がついた。驚いて気圧を測ると、ディスクの上方ははっきりと減圧していた。実験室の上の部屋でも、その上の階でも、同様だった。さらに詳しく調べると、ディスク上方にある物体の重力がわずかに減じていることが判明した。まるで重力が遮蔽されたかのようだった。実際、重力遮蔽の現象が起こったのだった。
ポドゥクレトノフの実験結果は、懐疑的な専門家の集中的な追試もクリアし、Journal of Physics-D, Applied Physics「応用物理」に受理された。すべて順調に見えていたが、１９９６年９月１日、英国のSunday Telegraph 紙にポドゥクレトノフに関する長い記事が載った。タイトルは「反重力装置が科学者を舞い上がらせる」だった。その後の騒ぎはひどいものだった。彼は地位を失った。大学が彼と関わりをもつことを止めたのだった。「応用物理」での掲載も寸前に拒否された。ポドゥクレトノフはこうして表舞台から去ったが、少なからぬ国の政府、研究機関、企業が彼の研究に大きな関心を寄せ続けた。アラバマ大学の中心的な科学者、リー・ニング博士（女性）はマーシャル・宇宙飛行センターで似たような研究を行っている。
２０年代にブラウンが重力遮蔽のテクノロジーを発展させ、５０年代には多くの大企業がこれを飛行技術に応用する準備をしていたというのに、５０年後の現在、ＮＡＳＡがいまだに、この問題の入り口付近でもたついているというのだろうか。ＮＡＳＡが暗中模索しているのに、米国の軍事産業はとっくにこの技術を使っているとでも言うのだろうか。クックはマーシャル・宇宙飛行センターで、この件を質問したが、明確な答えは得られなかった。さて、このあとは、プトフ（Harald Puthoff)博士が登場する。この有名な物理学者は、アメリカの秘密情報機関でずっと働いている。最初はＮＡＳＡで、そのあとStanford Research Institutで 秘密軍事プロジェクトに携わった。彼の研究テーマはレーザー技術であるが、７０年代、ロシア人の超感覚的知覚実験に注目し、この件の報告を行うと、ＣＩＡにスカウトされた。ＣＩＡは、ロシア人たちが透視能力者を使って米国の極秘プロジェクトを盗み見ようとしているという情報はつかんでいたが、それを信じてはいなかったのだ。しかし今やプトフは、独自の「リモート・ビュ−イング計画」の作成を依頼された。２０年間、彼のチームはソ連を透視によって観察し、ＣＩＡや他の情報機関に報告し続けた。
プトフ博士が、ロシアのノーベル賞科学者アンドレイ・サシャロフ（Andrej Sacharow）に興味をもったのは、このリモート・ビューイングの研究中だったろう。サシャロフは既に１９６７年にゼロ・ポイント・エネルギーが、重力や慣性と関連していることを発見していた。scientific American誌（１９９４年）によれば、プトフ博士は、このサシャロフの研究に触れて、重力克服のテクノロジーが達成可能だという見解をもったということだ。
クックが、プトフ博士にこの点を訊ねると、こう答える：「ええ、じきポドゥクレトノフと同じように突破口が見つかるでしょう。」
クックがさらに、「闇の世界」が、この原理に基づいた飛行機を作っているということは考えられないかと突っ込んでみると、暫く黙り込んだあと、こう答えた：「確かにありえる。私は何かが起こっていると言う人たちと話を交わしたことがある。手ごたえは、かなり確かだと思う。」クックはかなり面食らう。そこで、ＮＡＳＡの５つの研究プロジェクトのうち、どれが一番実現の見込みがあると思うかと訊ねると、プトフは即座に３つめの＜時空への影響＞を選ぶ。タイム・トリップだ。
このあと、ナチも重力コントロールに関心をもっていたこと。その技術が米国に流れたかもしれないことなどがクックによって論ぜられる。
Ｂ−２ステレス爆撃機は２００１年１０月７日にアフガニスタンを爆撃した。このステレス機は弾薬込みで重量１５５トン。一機１７億ドル。最も高価な兵器である。
このステレス機に反重力装置が使われている可能性が取りざたされている。ニックはこの話を長いこと本気にしていなかった。しかし、英国の有名な航空史家ビル・ガンストンが彼の意見を変えてしまう。ガンストンは元空軍パイロットで、王立航空協会のメンバーであり、Flight International誌の元発行者でもある。『近代戦闘機百科』などの著書が３００冊ある。彼は、 Air International２０００年１月号に、第二次世界大戦以降の戦闘機のエンジンの発達について書いた「Military Power」という詳細な研究記事の中で、Ｂ−２の特別な性能について語ったのだ。そして、反重力テクノロジーの搭載は明白であると結論つけている。これまで反重力問題について沈黙を守ってきたのは、悪評高いロンドンの刑務所に幽閉されるのは真っ平だったからだという驚くべき話を付け加えている。雑誌にこのテーマに関し、信じるに足る記事が載り始めたので、書けるのだと。
数年前まで、銀河の形を保つのに十分な暗黒物質が宇宙に存在すると考えられてきた。しかし、最近では、全く別のエネルギーがあるのだと考えはじめられている。それは、あまねく空間を占めている力であり、反重力効果をもっている。
物理学の国際会議では、反物質と真空のエネルギーが議論されている。この「真空エネルギー」は通常の重力と正反対の力を発揮すると、多くの専門家が主張している。つまり斥力として、反重力が働いていると。この謎の負のエネルギーには、「Quintessenz」という名が提案されている。そして、次元の問題につながっていく。
あとがき（樋口）
ついに現代宇宙物理学が、暗黒物質説を越え、この空間を満たす謎の斥力へと向かっている。プチ氏の唱えていた説へ、だんだん宇宙物理学の平均的見解が近づいている。でもまだ、インフレーション宇宙理論の枠内です。プチ氏の双子宇宙からの斥力という説が受け入れられた時は、ユミットの宇宙科学の正しさが証され、彼らの存在証明にもなるでしょう。その日はまだ遠いか。反重力をこの宇宙内で利用する「反重力装置」などは、大したことではない気がしてきました。双子宇宙側へ突き抜けることと比べればの話です。